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夜更けの灯台

夜更けにだけ灯る灯台。

その明かりの下で、静かに物語を書いています。

「夜更けの灯台」と申します。

日常のふとした瞬間、 誰かの心の奥にある微かな揺らぎ、

世界の継ぎ目のような“なにか”を 物語としてすくい取れたら—

そんな気持ちで書いています。

SF、現代ドラマ、青春、メタフィクションなど、

ジャンルの境目を行き来するような作品を 目指しています。

どうぞ、あなたの夜のひと時に、

少しだけ灯りがともりますように。

MUSIC

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Chapter01 / Ep00_プロローグ
chapter01/ep00.mdx
Ep00_プロローグ
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# Chapter 01 - Ep00: Prologue
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System: Initializing...
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真っ白。
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世界が、白く染まっていく。
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足元から、指先から、髪の毛の先から――すべてが光の粒子となって、空へと溶けていく。
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痛くない。
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怖くもない。
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ただ、静かに、消えていく。
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息を吸う。
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吐く。
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その音すらも、もう聞こえない。
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「……ねえ」
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誰かの声。
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「聞こえる?」
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震える声。
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それでも、諦めていない声。
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「私たちが――」
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ノイズが、走る。
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視界が、砂嵐に侵食される。
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「――ここにいた、証が」
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《SYSTEM LOG》
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>> CRITICAL ERROR: World data corruption detected.
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>> Sector: 0x415350 (ASP)
46
>> Timeline integrity: VIOLATED
47
>> Data consistency: FAILED
48
>> Emotion overflow: MAX (640/640 days)
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50
>> Initiating emergency shutdown protocol...
51
>> Countdown: 00:00:03
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最後に聴こえたのは、歌声だった。
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誰かが、歌っている。
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いや――みんなで、歌っている。
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ギターの音。
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ベースの震え。
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ドラムの鼓動。
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キーボードの旋律。
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そして、彼女の声。
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世界を終わらせるための、祈りのような歌。
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>> 00:00:02
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空が白く、弾ける。
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建物が、データの塵となって舞い上がる。
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でも、音だけは――
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音だけは、最後まで響き続けた。
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>> 00:00:01
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「■■■■■」
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誰かが、微笑んだ。
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「――■■■■」
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89
>> 00:00:00
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>> SYSTEM HALTED.
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>> ................
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そして――
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世界は、静寂に還った。
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102
◇ 640 days ago.
103
◇ It all began on a spring day.
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107
プツン。
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109
音が、途切れた。
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次の瞬間。
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113
目の前に広がっていたのは――
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澄み渡る、青い空だった。
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Ep00_プロローグ

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Chapter01