chapter01

Ep00_プロローグ

Chapter 01 - Ep00: Prologue

────────────────────

System: Initializing...

・ ・ ・ ・

真っ白。

世界が、白く染まっていく。

足元から、指先から、髪の毛の先から――すべてが光の粒子となって、空へと溶けていく。

痛くない。 怖くもない。 ただ、静かに、消えていく。

息を吸う。 吐く。 その音すらも、もう聞こえない。

「……ねえ」

誰かの声。

「聞こえる?」

震える声。 それでも、諦めていない声。

「私たちが――」

ノイズが、走る。 視界が、砂嵐に侵食される。

「――ここにいた、証が」

────────────────────────────────────── 《SYSTEM LOG》

CRITICAL ERROR: World data corruption detected. Sector: 0x415350 (ASP) Timeline integrity: VIOLATED Data consistency: FAILED Emotion overflow: MAX (640/640 days)

Initiating emergency shutdown protocol... Countdown: 00:00:03 ──────────────────────────────────────

最後に聴こえたのは、歌声だった。

誰かが、歌っている。 いや――みんなで、歌っている。

ギターの音。 ベースの震え。 ドラムの鼓動。 キーボードの旋律。

そして、彼女の声。

世界を終わらせるための、祈りのような歌。

────────────────────

00:00:02 ────────────────────

空が白く、弾ける。 建物が、データの塵となって舞い上がる。

でも、音だけは―― 音だけは、最後まで響き続けた。

────────────────────

00:00:01 ────────────────────

「■■■■■」

誰かが、微笑んだ。

「――■■■■」

──────────────────────────────────────

00:00:00 SYSTEM HALTED. ................ ──────────────────────────────────────

────────────────────

そして――

世界は、静寂に還った。

────────────────────

◇ 640 days ago. ◇ It all began on a spring day.

────────────────────

プツン。

音が、途切れた。

次の瞬間。

目の前に広がっていたのは――

澄み渡る、青い空だった。